漫画家まどの一哉ブログ
「ソヴィエト旅行記」 ジッド
読書
「ソヴィエト旅行記」ジッド 著
(光文社古典新訳文庫)
共産主義の夢と理想を求めてソヴィエトを訪れた作家ジッド。だが彼が目の当たりにしたのは、既にスターリンの独裁体制となり果てた悲惨な国家の姿だった。
「ソヴィエト旅行記」と、その批判に対して回答した「ソヴィエト旅行記修正」。
ジッドの読者でなくても、彼が社会派の作家でなくマルクス主義にも詳しそうではないことは想像がつく。そんなジッドの作家性が幸いしてこのルポは論理を操ることなく、実際に見て感じたままを綴った読みやすくわかり易い出来栄えとなっている。加えてジッドという人の誠実さ真面目さが窺えて気持ちが良い。あくまで市民・労働者に寄り添い、不法な搾取や不平等をゆるさない正義感をもっていればこそこのルポは書けた。
あっという間に完成しつつあるスターリンの暗黒体制。物価高・低賃金にあえぐ労働者を打ち捨て、自分たちの荘厳な宮殿を作ろうとする政府。皮肉にも今の日本の実情から押し計れてしまうのが悲しい。それにもまして圧倒的な自由のなさと監視体制の恐ろしさ。これも今日見本となる社会には事欠かない。
それにしてもジッドの的確な指摘・批判があっても、なかなか知識人の社会主義への夢は打ち砕かれることなく、ロマン・ロランはじめ、解説によると宮本百合子でさえもジッドの告発する現実を受け入れることはできなかった。それこそが悲しい現実だ。
「ソヴィエト旅行記」ジッド 著
(光文社古典新訳文庫)
共産主義の夢と理想を求めてソヴィエトを訪れた作家ジッド。だが彼が目の当たりにしたのは、既にスターリンの独裁体制となり果てた悲惨な国家の姿だった。
「ソヴィエト旅行記」と、その批判に対して回答した「ソヴィエト旅行記修正」。
ジッドの読者でなくても、彼が社会派の作家でなくマルクス主義にも詳しそうではないことは想像がつく。そんなジッドの作家性が幸いしてこのルポは論理を操ることなく、実際に見て感じたままを綴った読みやすくわかり易い出来栄えとなっている。加えてジッドという人の誠実さ真面目さが窺えて気持ちが良い。あくまで市民・労働者に寄り添い、不法な搾取や不平等をゆるさない正義感をもっていればこそこのルポは書けた。
あっという間に完成しつつあるスターリンの暗黒体制。物価高・低賃金にあえぐ労働者を打ち捨て、自分たちの荘厳な宮殿を作ろうとする政府。皮肉にも今の日本の実情から押し計れてしまうのが悲しい。それにもまして圧倒的な自由のなさと監視体制の恐ろしさ。これも今日見本となる社会には事欠かない。
それにしてもジッドの的確な指摘・批判があっても、なかなか知識人の社会主義への夢は打ち砕かれることなく、ロマン・ロランはじめ、解説によると宮本百合子でさえもジッドの告発する現実を受け入れることはできなかった。それこそが悲しい現実だ。
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