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漫画家まどの一哉ブログ

   
「ゲゲゲの女房」
読書(mixi過去日記より)
「ゲゲゲの女房」
武良布枝


昨年発売されて話題をよんだ、水木しげる夫人の回想記。
水木さんの漫画でみると、いつもヌボーッとした顔に描かれているが、写真をみるととてもチャーミングな人ではないか。

水木さんの自伝はいろいろと目にする機会が多いので、あらかたは知っていたが、奥さんの目で見るとまた格別だ。極貧の貸本漫画家時代、ほとんど食えていないのに、水木さんは漫画家を止めようとしない。常に生活のことを第一に考えている水木さんなら、もっと儲かる仕事に転職してもよさそうなものだが、やっぱり漫画家は天職だと信じていたのだろう。食えなくても描く、この根性がすごい!

いちばん感動したのは、ある夏の夜、奥さんが夕食の用意をして水木さんを呼びにいった時、無心でカリカリとペンを走らせるその後ろ姿にオーラのようなものを感じ、感動して動けなくなるところ。これほど集中してひとつのことに打ち込む人間を、それまで見たことがない。この人の努力は本物だと誇りに思うようになったという箇所。奥さんからすれば、あれだけの努力が報われないはずがない、という信念があって極貧生活を耐え抜くことができたのかな。

後年人気が出て、ある程度の収入を得るようになって、体がぼろぼろになるほど忙しくなっても仕事の量を減らさない。それは再び貧乏に追われることが恐ろしくてしょうがなかったからだそうだ。つげさんも自作のなかで「俺は貧乏の恐ろしさを、骨の髄まで知っている」というセリフを使っていたが、現代の我々には計り知れない恐ろしさなのだろう。

水木さんのころは、自己表現としての漫画はありえなかったから、漫画を描くことは絶対に漫画で飯を食うことだった。その努力は自分みたいな中途半端な立ち位置の漫画描きが、真似できることではない。自分はこれは自己表現だという逃げ道を持っている。
でも、水木作品は売れる前のほうがオモシロイけどね。

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