漫画家まどの一哉ブログ
「エティオピア物語」下 ヘリオドロス
「エティオピア物語」下
ヘリオドロス 作
(岩波文庫・下田立行 訳)
舞台は紀元前6世紀末、ペルシャ支配下のエジプト対エティオピアの戦いの中で捕虜となった二人の運命は? 古代ギリシャで書かれた本格物語小説。
筆が慣れてきたのか、前半の盗賊どもからの逃避行などに比べると俄然面白くなってきた。特にエジプト太守の妻でありながらテアゲネスに色目を使う姦婦アルサケの魔手が良い。色事を企むあの手この手など悪者らしくて楽しい。主人公があまりに美男美女なのでこの種の揉め事がすぐ起きる仕掛けだ。
一転してナイル川を背にしてのエジプト対エティオピアの戦争も、装備や戦略の解説もていねいで軍記物としての面白さに溢れている。両軍特色があり、特にゾウやキリンも登場するエティオピア軍の奇想ともいえる戦いぶりは愉快だ。
捕虜となった二人だが、エティオピアの評定衆たちが捕虜を犠牲として神に捧げることに反対する人権派。これで解決。
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