漫画家まどの一哉ブログ
「ほとんど記憶のない女」 リディア・デイヴィス
「ほとんど記憶のない女」
リディア・デイヴィス 作
(白水社・岸本佐知子 訳)
1ページに満たないごく短いものを中心に、従来の小説の枠を越えた破格の小品集。話の外へ出るメタな構成を持つが、けしてエッセイでもない不思議さ。
「フーコーとエンピツ」:地下鉄や出先でフーコーを読みながら、どこがわかりにくいかなど、具体的にメモを取っていく。そのメモの内容とそうしている自分の日常を同じだけ書いて、ひっくるめて小説になっている。
「話の中心」:書いた小説がなぜ面白くないかを分析しながら、話自体が進行する。ふつうに話を追っていると、ここはこうした方が面白くなったのではなどと反省されて、また続いてゆく。
「くりかえす」:旅することは書くことである。読むとは旅することである。旅することは翻訳することである。その他の要素も入れて組み合わせて考えていくと、いく通りかの回答が得られる。またその要素を別のものにしてもいいらしい。
極めて珍しいメタ小説と言えるものがあるが、そうでない体験記や旅行記などを含めても、総じて怜悧で分析的でやや愉快な色調なので、楽しい読書体験ができる。
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