漫画家まどの一哉ブログ
「ふたりの証拠」 アゴタ・クリストフ
読書
「ふたりの証拠」
アゴタ・クリストフ 作
代表作「悪童日記」の続編。主人公の双子のうち、一人は国境を越えて行き、残ったもう一人の青春期を描く。直接政治的なテーマを追うものではないが、ハンガリー動乱の結果多くの市民が犠牲となったことやソビエトの支配が背景としてある。動乱で愛する人を亡くし、悲しみを抱えて生きる人々の話でもある。
「ふたりの証拠」
アゴタ・クリストフ 作
代表作「悪童日記」の続編。主人公の双子のうち、一人は国境を越えて行き、残ったもう一人の青春期を描く。直接政治的なテーマを追うものではないが、ハンガリー動乱の結果多くの市民が犠牲となったことやソビエトの支配が背景としてある。動乱で愛する人を亡くし、悲しみを抱えて生きる人々の話でもある。
まるで箇条書きのような、何の修飾もなくぶっきらぼうに事実のみを書いて放り出したような文体。それなのに登場人物の人格が濃厚に立ち上がってくるのが実に不思議だ。内心の説明がなく、未亡人と幼い連れ子を引き取ったり図書館員の女性をつけまわしたり、主人公リュカのとる行動の真意もわからぬままあれよあれよと読まされてゆく。
ところが物語も半ばすぎると、政府に殺害された妻と暮らした旧宅を見続ける不眠症の男や、一編の小説を書くことを遠い目標に酒に浸る書店兼文房具屋の店主など、人物の語りがだんだん濃密になって行き、その様々な人生の迫力に息を飲む。ミステリーのような仕掛けも含みながら充分ドラマティックだが嘘ではない。これぞ筆力というものだ。
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