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「雨の中の蜜蜂」

読書

「雨の中の蜜蜂」 カルロス・デ・オリヴェイラ 作

1953年発表、ポルトガル・ネオリアリズム文芸の代表作。 商人兼農場主の主人公は、なにやら常にくよくよと悩んでいる男で、自分がこれまで犯した罪と呼べるほどでもない罪を、神父に懺悔するばかりでは足らず、地元の新聞に記事として発表しようとする。このおかしな行動は阻止されるが、そもそも落ちぶれた名門の出身である自分の妻を、この行為に巻き込んで恥をさらしてやろうとする下心もある。そんな主人公は大酒を喰らって酔いつぶれ、妻に寝室から追い出しをくうが、明くる早朝自分の雇っている御者と、近所の陶工の娘との逢い引きを知ることとなり、これを陶工に密告。怒った陶工は弟子と組んで御者を撲殺してしまい、密告した主人公はますます良心の痛みに苦しむこととなるという粗筋。

悲劇と言えば悲劇に違いないが、主人公の情けなさが可笑しいので全編気持ちよいユーモアに満ちている。主人公はいるものの、上流から下層までいろんな住民が登場する集団劇でもあって、ストーリーよりは人物描写が小説の中心となる。

また主人公は基本的に死の恐怖にとらわれていて、雨に打たれて死んでいく蜜蜂の如く人間の行く末のはかなさに日々思いをはせているが、けっして達観しているわけではなく、その恐怖におののいているのだ。まことにキリスト教徒にしては人間として正直だ。神父は彼の信頼を勝ち得ていない。この小心でちっぽけな人間が、酔っぱらいながらおろおろと過ごす、実はたった2日間が描かれている小説なのである。

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