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「ガルシア=マルケス中短篇傑作選」 ガブリエル・ガルシア=マルケス

「ガルシア=マルケス中短篇傑作選」
ガブリエル・ガルシア=マルケス
(河出文庫)

マジックリアリズム開眼以前のものも含めて、マルケス各短編集より代表作を抜粋。

2019年に読んだちくま文庫「エレンディラ」と3作ほど作品がかぶるが、訳者も違うしあらためて読んでも面白い。
「純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語」:以前はそれこそマジックリアリズムの悪夢に酔いしれたが、よく読むと不思議なことはなにひとつ起こらない気がする。それより殺しても死なない邪悪な祖母の生命力が人間離れしているので、有無を言わせず現実世界から引き離される感覚だ。

「大佐に手紙は来ない」:マジックリアリズム以前のマルケスがこんなに面白いとは。軍人恩給開始の通知を待つ大佐とぜんそくを病む妻。困窮するなか唯一の資産である闘鶏用の軍鶏を売るかどうするか。二人の会話が、長年連れ添った夫婦の機微がしれて味わい深く、読み進むのが惜しいくらい良い。文庫中これがいちばん。

「この町に泥棒はいない」:空想的な夫と現実的な妻という関係はこの作品でも若い二人で再現されていて、こちらも会話がおもしろい。泥棒を犯した夫と、その軽微な犯罪の露見を協力してくいとめようとする妻。プライドだけ高い夫はまったく情けない。結局マルケスはマジック以外の人間描写がマジックより面白いというとりあえずの見立て。

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