漫画家まどの一哉ブログ
「フランケンシュタイン」 シェリー
読書
「フランケンシュタイン」シェリー 作
(光文社古典新訳文庫)
若き科学者フランケンシュタインが生み出した人造人間。人間離れした頑健な肉体を持つ彼は、知能・感情も豊かで繊細な怪物であった。
誰もが知る怪奇幻想小説の古典。作者メアリー・シェリーがこの作品を書いたのは1817年と思いのほか古く、映画のイメージもあってもっと現代に近い時代の作品だと思っていただけに驚いた。
怪物は人間味あふれる繊細な心の持ち主であるばかりでなく、優れた知性と教養の持ち主で、これはこの悲劇の悲劇性をさらに際立たせる効果をもっている。しかも彼は肉体的にも超人である。
これだけ特異なキャラクター設定があれば、この物語の主人公はフランケンシュタイン博士であるとともに怪物でもあって、どちらも苦悩と破滅の人生を歩む筋立てだ。
怪物は神出鬼没で舞台はヨーロッパを軽く踏破するスケール。自在な物語展開に作者の発想の自由さを感じる。もとより荒唐無稽とはいえキワモノ的な驚かしではなく、怪物の人間的な悲しみに沿って読める怪奇・SFの先駆的名作だと思う。
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