漫画家まどの一哉ブログ
短編集「買い物かご」 キンキントゥー
短編集「買い物かご」
キンキントゥー 作
(大同生命国際文化基金 2014年)
現代ミャンマー小説。市場や路上、船、鉄道でものを売る人々。また買い物に集まる人々。貧しい中でやりくりして生きていく買い物あれこれを綴った短編集。
野菜や魚、菓子など食料品や衣類、食器、洗剤などの日用品。日常生活で必要なあらゆる細かなものが登場。売り手と買い手を挟んで切実な価格のやりとりが開始される。どの作品でも価格は具体的に表現されているので臨場感がある。
作者は大学を出て教職についているが実家の商売を手伝っていた経験もあり、売る側の内情にも詳しい。商店や市場と言っても良くて小さな小屋を利用している程度で、屋台・露天が多く、台車を引いて街を巡る売り手も登場。過酷なのは満員の列車内に商品を入れた籠を頭に乗せて乗り込む売り子の女性たちだ。
買い物だけに焦点を絞った小説というのは日本でも珍しいのではないか。これも一種の経済小説かもしれないが、描かれるのは貧しい人々、それも主に女性たちである。
面白かった箇所(ネタバレ):体の不調を白馬神(精霊)のしわざと理解している女性に診療所の受診を勧めると「西洋医学のお医者さんが白馬神をどうしてくれるというのです?」との返事。
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