漫画家まどの一哉ブログ
「百年と一日」 柴崎友香
「百年と一日」
柴崎友香 作
(筑摩書房)
年の流れとともに変わってゆく街や人々。様々な人生の長い長い移りゆきを集めた小品集。
時代は次々と過ぎゆきて、あっという間に百年くらいは経つ。かと思えば過去へ過去へとさかのぼり、賑やかな街もかつては草はらしかない…。長くても6ページくらいの中に、平凡な人々の身に起きた出来事がさらさらと書かれて静かな余韻を残す。
描写はあくまで出来事の連鎖で内心や感情に深く切り込むことはしないが、それがかえって一人の人生や人々の営みを達観したような、落ち着いた感慨を得ることができる。神の視点というとおおげさだが、百年くらいをまとめてみれば山も谷も小さなものだ。
それにしても膨らませれば長編にでもできるような様々なドラマが、ごく短い形いくらでも続く。それだけで感心してしまう。
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