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漫画家まどの一哉ブログ

   
「自由への道」4(猶予) サルトル

「自由への道」4(猶予)
サルトル 作
(岩波文庫 海老坂武・澤田直 訳)

チェコ・ズデーデン地方をめぐってヒトラーの要求と対峙する英・仏。ラジオから流れるヒトラーの演説にフランス中の人々が耳をそばだてる。大きな政治が人々の運命を翻弄する。

ズデーデン地方に多くドイツ人が暮らしていることを理由に、割譲を要求するヒトラー。その正義の方便は非常に勝手な自己英雄化であって、聞くだに不愉快なものだ。現在のプーチンやトランプの言い草を彷彿とさせる。すでにユダヤ人に対するヒトラーの蛮行を熟知しているフランス中の人々が、ヒトラーの演説を聞くためにいやいやながらもいっせいにラジオにかじりつく。戦争となればパリ陥落は避けられない。

今まで以上に世界の動向を描いて物語に厚みが増している感じだ。モンタージュ的・コラージュ的手法もやや変わって、各登場人物の動向を連続的にしっかりと描き、戦火を避けるために貨物列車で運ばれる障害者シャルルたちや放浪の末破綻する反戦ブルジョア青年フィリップの動向に目が離せない。
翻って、マチウやダニエルなど第1部で主に登場した人物は、この切羽詰まった状況に中でも常に観念的で、覚悟という意味ではもどかしさが残る存在だ。マチウは動員されたのに相変わらず別の女性と交渉を持ち、仕方なく召集の汽車に乗る。しかし戦争を前にしてはインテリも労働者も同じで、なにも出来ることはないかのもしれない。

当事者チェコ政府をかやの外の置いた徹夜の四者(英・仏・独・伊)会談でひとまず戦火は避けられるが、人々の喜びがつかの間のものであることを我々読者は知っているのだ。

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