漫画家まどの一哉ブログ
「臨海楼綺譚」 スティーヴンスン
「臨海楼綺譚」
スティーヴンスン 作
(光文社古典新訳文庫)
稀代のストーリーテラー、スティーヴンスンの面白短編4編。
「臨海楼綺譚」:王道をいく冒険譚。海岸近くの望楼で炭焼党員を迎え撃つ。タッグを組む旧友の性格が勇敢だが正義漢でもなく、いい味出してる。
「その夜の宿」:教養人でありながら荒くれた下層生活を続ける詩人ヴィヨン。財布をすられた深夜、とある代官の家に一夜の宿を求めるが…。
珍しくストーリー本位な書き方ではなく、主人公ヴィヨンの屈折した思想・心情に焦点を当てた佳編。代官の重んずる礼節と名誉が裕福である故のものであることをヴィヨンは明らかにするが、通じる相手ではない。
「マレトロワの殿の扉」:仕掛けられた扉から、さる名門の屋敷に捕らわれてしまい、令嬢とむりやり結婚させられそうになるという大変な設定。ものすごい無理筋。分からず屋の老叔父が相手。短編なのでそれだけで十分面白い。(個人的にオチはよくわからない)
「天意とギター」:歌と演奏で皆様のごきげんをうかがう旅芸人の夫婦。この旦那は自身の職業を芸術と吹聴しているが、芸能も含めて芸術全般を広く解釈している様子。楽天的な性格が愉快。妻とともに大声で歌い続けるが、はたしてうまいのか下手なのかわからない。後半登場する貧乏画家の画力もそう。それにしても町の連中が何故か芸人にあまりに冷たい。
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