漫画家まどの一哉ブログ
「絶対製造工場」 カレル・チャペック
「絶対製造工場」
カレル・チャペック 作
(平凡社ライブラリー)
物質の持つ質量を全てエネルギーに変える画期的な装置が発明される。だが物質の解放と同時にあらゆる物に遍在する絶対的存在(神)も解き放たれてしまう。異色奇想小説。
絶対が世界に氾濫するというと何が起きているのかわからないが、要するに神の蔓延であって、人々は無心の善意の虜となってしまう。この着想はある程度話を紡いでいくことはできると思う。また、絶対(神)が資本主義の原則を超えて工場生産を進め、世界に物が溢れ出すのもおもしろい。
しかしこれは着想を絵解きしているようなものであって、そこに終始していてはドラマとしてのふくらみは薄いままではないだろうか。主人公であったはずの発明家と事業家は途中で姿を消してしまい、だれも話を引っ張らないのだ。
そして自分たちの信ずる絶対的真理をかかげ他者の信仰を省みない人類が、次々と世界大戦の泥沼に飛び込んでいく展開。相対的視点の大切さがテーマであるにしてもやはり絵のない絵解きであり単調なものだ。小説作品としては生硬な印象で、失敗しているのではなかろうか。
PR