漫画家まどの一哉ブログ
「空と風と星と詩」 尹東柱
「空と風と星と詩」
尹東柱 作
(岩波文庫・金時鐘 編訳)
太平洋戦争末期、福岡監獄で獄死した若き詩人ユン・ドンジュ。わずかに残した美しく鮮烈な言葉の数々。
素直に書いた言葉の不思議な美しさがある。なにか少年が書いたような飾らない言葉。見えるものそのままに描き、沸き上がる感情をそのままに書いたような、素朴で直情的な印象があるが、それだけではつまらないはずなのに、鮮烈な訴えとなって届く。じつはこれは独自に到達されたひとつの完成形なのかもしれない。
こういう作品を成り立たせているのが際立った技術であるのか、それともキリスト教信仰に裏打ちされた故であるのか。言われてみれば聖書からの引用はあるが、それよりも信仰心からひとりでに現れざるをえない、なにか魂の所産といったものを感じる。と、キリスト教をよく知らないで言う。
技術というのは飾らないで飾っている言葉の技術だが、ふだん詩を読まない私にその部分を解説出来る力はもとよりないので、あきらめるほかない。詩魂なき者が勝手なことを言ってもうしわけない。
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