漫画家まどの一哉ブログ
「科学と仮説」 アンリ・ポアンカレ
「科学と仮説」
アンリ・ポアンカレ 著
(ちくま学芸文庫)
「わたしたちのユークリッド幾何学は、それ自体では言語の規約のようなものにすぎない」幾何学の公理・公準、物理学の仮説とは何か。科学の要諦に迫る哲学的エッセイ。
数学が苦手で数式などさっぱりわからない自分だが、内容的には非常に興味深く、文章の心地よさに惹かれてついつい読んでしまった。とは言っても後半割愛した部分もあるが…。明晰さの鏡のような著述で、正確には理解していなくても読めるというシロモノ…(こんな読み方でいいのか?)。
数学における公理というものはなぜそう言えるのか。公理はどこから来たか?
これは常々素人考えでも疑問だったが、実験を積み重ねてもその事実が公理へと決定されることとは質的な飛躍があり、帰納的に考えることはできない。より先験的なものへ先験的なものへと繰り返し遡ってそのそもそもを見つけようとするが、どうやら公理は人間が創った規約であるらしい。
というような大雑把な読み方をしながら「空間と幾何学」「実験と幾何学」「古典力学」「エネルギーと熱力学」などという項目を追っていった。
この著作の面白さは前半ここまでにある。
巻末訳者解説で、公理は分析判断でも後見的総合判断でもなく、先験的総合判断であることを結論付け、幾何学の公理が規約である結論に導かれるが、この解説は途中で一回読みたかったくらいわかりやすかった。
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