漫画家まどの一哉ブログ
「死は存在しない」 田坂広志
「死は存在しない」
田坂広志 著
(光文社新書)
この宇宙で起きた全ての出来事が記録されている量子真空のゼロ・ポイント・フィールド。科学と宗教の違いを超えて意識と死の真相に迫る究極の一冊。
この世界の目に見える物質も目に見えない意識も全て素粒子で構成されており、実は「エネルギーの振動」に他ならない。何もないと思われている真空も莫大なエネルギーを含んでおり、この量子真空の中のゼロポイント・フィールドに、我々の意識を含めて全宇宙で起きたことが全て記録(記憶)されている。
私たちが日常体験する不思議な出来事を解き明かし、世界の宗教が到達した真理の正体に迫るゼロ・ポイント・フィールド仮説。私が科学の素人のせいかもしれないが新鮮で面白く、この仮説だけでまとめてほしかった。
ところが後半はおおいなる宇宙意識への死後の個別意識の昇華の話で、正にスピリチュアルそのものの内容となっていく。その読後感はやはり似非科学に基づいた半宗教的な、PHP的なフナイ研究所的な感触で、物理学の「波動」という言葉が怪しい水を売るのに活用されているのと同じような気がする。
水を売っていないにしてもそのあたりは微妙なところで、著者の履歴・著作から推し量るしかないが、この新書の編集者は好意的に理解しているということだろう。
ところで死後、意識が個別的なエゴを離れしだいに平和な集合意識全体と融合していくなら、なにゆえ我々は苦労して生きているのかわからない。
PR