漫画家まどの一哉ブログ
「巨匠とマルガリータ」(下) ブルガーコフ
「巨匠とマルガリータ」(下)
ブルガーコフ 作
(岩波文庫)
巨匠を救出するため魔女となって飛び回るマルガリータ。懸命に捜査するも悪魔たちにはとうていかなわない警察。一大スペクタルを経てやがて訪れる平和で幸福な終焉。
悪魔たちの大掛かりなイタズラに対して警察が徹底捜査を開始するが、もちろん真相にたどり着くことはできない。あたかも刑事ドラマのような展開になって意外な楽しさがある。魔女となったマルガリータが、復讐に燃えて巨匠の作品を粗末に扱った編集者や評論家の家を荒らしまくるのも愉快だ。
また、この作品には主人公である巨匠の書いた小説内小説があって、ヨシュア(イエス)を処刑してしまったローマ総督ポンティウス・ピラトゥスの懊悩を描いた作品。この作品もイスカリオテのユダの殺人を巡って推理ドラマのような内容になっていて静かな興奮をそそる。
悪魔たちのような異形の者、超人的な能力を持つ者が揃っていると、漫画を読むようなくだけた楽しさがあって、いつまでもこれらのキャラクターとじゃれあっていたい気持ちになってしまう。世界名作文学なのに珍しい。
こうやって書いてみると私が楽しんでいるのは全くブルガーコフのエンターテイメント術に乗せられているわけで、では世界名作文学ならではの読み応え、感銘するところはどこかというと、簡単にはわからないのだった。
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