漫画家まどの一哉ブログ
「墓の話」 高橋たか子
「墓の話」
高橋たか子 作
(講談社)
フランス各地で鄙びた墓所を訪ね歩いた、墓にまつわるドキュメントと創作5編。
作者はたびたびフランスを訪れ、パリを拠点にかなり遠くまで古い教会や修道院を回っているので、本書もルポルタージュ作品かと思うと、5編中3編ははれっきとした創作である。
日本人の手によるフランスを舞台としたフランス人しか出てこない小説というのはなかなか珍しいのではないか。
その感触のせいかこれらがいかにも高橋たか子作品かといわれればよくわからない。ただ本来自身の経験に寄らなくても架空の物語がいくらでも書ける人なので、こういったものもあって当然だろう。
第三話「ある小説」地方の小さな墓地を守る男が読ませてくれたある死者の自伝。第四話「自殺者のメモ帖」ある古書店で見つけた小さな冊子。2作ともここに登場する人物は、実はそれぞれ墓守の男や古書店主本人なのではないか?という終わり方。だからどうだというわけでもないが…。
第三話「ある小説」:故意ではないにせよ新婚の妻が事故死するきっかけをつくった男への、元夫の好意を装った粘着的な復讐劇。恐ろしい。
第四話「自殺者のメモ帖」:ごくたまに文通するだけの彼女は精神を病んでいて入院してしまうのだが、終始明るく溌剌としているので好感を持ってしまう。しかし現実からは遊離している。
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