漫画家まどの一哉ブログ
「圧力とダイヤモンド」 ビルヒリオ・ピニェーラ
「圧力とダイヤモンド」
ビルヒリオ・ピニェーラ 作
(水声社・山辺弦 訳)
国民の多くが得体の知れない圧力に怯え、収縮や雲隠れ・人工冬眠などの手段で人生を捨ててしまう。ただ1人圧力者の正体に立ち向かった宝石バイヤーの運命やいかに?キューバ文学。
解説を読んで作者ピニェーラが生前はキューバ政権のスターリニズムに弾圧されて陽の目を見ないまま亡くなったことを知ったが、そうするとこの作品の主題である目に見えない圧力とは政権の弾圧のことだったかとも思う。
しかしそう単純にとらえなくても、この不思議な作品は楽しんで読むことができる。最初から地球を脱出した人々の話題まで出てくるが全く解説されない。
主人公は宝石仲買人でそれなりの会社の一員だが、宝石仲買人とは自身は庶民ながら富裕層と接触できる面白い立場だ。それを活かして噂の宝石をめぐる競合会社との争いをもっと描いて欲しかった。会社の社長一族まで登場しながら、話はどんどん外れて巨大なカードゲームビルや、人工冬眠装置などへ進んでしまう。
このあたり話全体のバランスで言うと、あまり話を広げず、宝石売買の通俗的おもしろさを保ちながら奇怪な圧力の正体に迫ることはできなかったか?なんとなく、とっ散らかった印象があるのでそう思ったが、作者はもっと大きな世界を考えていたようだ。空想力の勝利だ。
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