漫画家まどの一哉ブログ
「ツヴァイク短篇小説集」 シュテファン・ツヴァイク
「ツヴァイク短篇小説集」
シュテファン・ツヴァイク 作
(Heigen-sha・長坂聰 訳)
詩・戯曲・評伝など多方面に活躍したツヴァイクの短篇小説から10編を厳選。
「猩紅熱」:まだまだ少年の面影が残る若きベルガー青年。大学に進学してウィーンに暮らすが、性格がおとなしく酒やタバコにも馴染めない彼は他の学生からバカにされっぱなしである。ベルガー君、自分以外のものに憧れるな。人それぞれ。自分だけの人生を自信を持って歩め。
「エーリカ・エーヴァルトの恋」:古典文学に登場する女性は男性が好む淑女ばかりで、勝ち気で自己主張する女性は先ずいない。ツヴァイクは古い作家ではないが、この女性(エーリカ)はおとなしすぎて行動より観念が過多。ために全てが遅すぎて恋をのがすタイプ。
「ある破滅の物語」:国王が変わって、元国王の愛人であったマダム・ドゥ・プリも田舎町へ追放される憂き目に。サロンでの人間関係以外に取り柄のない人間にとって、都市を離れてしまえばそれは破滅である。自分でうちこみたいものはないのだ。
「レポレラ」:馬の如く丈夫で黙々と働く無骨そのものの田舎娘クレスツェンス。お屋敷の下女として勤めるうち、旦那様への恋情からしだいに隠された人間的感情が露わになるが、怪物的な意志の強さは殺人でさえも断行しかねない。きわめて珍しい人物造形。
どの作品も面白いが、なにかしら個人的に合わない。それがなにかわからないが、人物が心に沁み至らなかった。作品としては文句のつけようがない…。
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