漫画家まどの一哉ブログ
「ガストン・ルルーの恐怖夜話」 ガストン・ルルー
「ガストン・ルルーの恐怖夜話」
ガストン・ルルー 作
(創元推理文庫・飯島宏 訳)
その作品が推理小説の嚆矢とされるルルー。全盛期の本格怪奇短編8編を集録。
1920年代に書かれたもの。既に本格怪奇短編としての出来栄えと風格が充分にある。あり得ない幻想的な出来事はあまり起こらず、残酷な殺人を題材にしたあくまで現実の範囲で起きる恐ろしさを描いたものが多い。
8編中5編は5人の元船乗りたちが集まって、自分が体験した身の毛もよだつ恐ろしい話を語り合うといった趣向。それはよいのだがメンバーはお互いの話に懐疑的で、信じないか馬鹿にしている様子。たしかにその仕草は演出としてアリだがやや必要以上な気がする。語り手の話が終わってからこちら(読者)が怪奇に浸る余韻を得ないうちに、すぐさまメンバーによる茶化しが始まってしまって興醒めである。ラストにこれはいらないんじゃないか。
この設定以外で書かれた巻頭「金の斧」(夫の隠された仕事の話、オチでびっくり)、巻末「火の文字」(トランプゲームを軸とした悪魔との取引)「蝋人形館」(一人深夜の蝋人形館で肝試しに挑戦)は怪奇短編の王道をゆく佳作で楽しめた。
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