漫画家まどの一哉ブログ
「オブジェクタム/如何様」 高山羽根子
「オブジェクタム/如何様」
高山羽根子 作
(朝日文庫)
平凡なはずの日常世界に潜む過去からの謎。SF風味もあり。新鋭作家の初期短編集。
「オブジェクタム」:現代小説で子供が主役となると、どうしても親含め周りの大人たちの役どころが定番なものになってしまうきらいがあるのだけど、この作品は秘密裏に壁新聞を作っている祖父・親に虐待を受けながら果敢に生き抜く女児・表向きは俳句教室の教師である謎の男など、キャラクターがどんどん登場しておもしろかった。どうやって壁新聞を各所に貼っていたか不明。
「如何様(イカサマ)」:この作品が文章も落ち着いていて突出してよかった。戦地から復員してきた夫がどうみても別人だが、画家である夫と同じ行動を黙々と続けてやがて蒸発してしまう。この謎はなかなか解けないだろうと思わせる設定で、だんだんと夫が職業的贋作作家であった真実が明らかになるにつれ、本物と偽物の間の揺らぎこそが真実のような意味合いも見えてくるが、とくにテーマ的理解をする必要はなく楽しんで読める。
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