漫画家まどの一哉ブログ
「こぼれ話、物語、笑い話」 サド全集【第七巻】
読書
「こぼれ話、物語、笑い話」サド全集【第七巻】
(水声社)
獄中で執筆され、短編集として構想されていた艶笑小説を収録。他に構想メモや断片、蔵書目録なども。
ごく短いユーモラスなエロティック小説ばかりで、話自体は特別なものはなく、浮気に励む夫がまんまと妻に復讐されるようなネタが多いが、面白く読める。
さすがサドなのか、訳文を読んでいるだけだが脳に心地よい緊張感があり、なんといっても文章の格が違う気がする。これはたわいのない艶笑譚だからこそかえって気づくのかもしれない。
「慰み者にされた法院長」:もはや老齢の身でありながら若く魅力的な女性を妻として迎え入れることに成功した悪徳法院長。彼女や周りの人々がこの結婚を阻止しようとあの手この手で法院長を酷い目に合わせる爆笑小説。法院長がどんな目にあってもすぐ次の罠にひっかっかるのがおかしい。収録中最も長い短編。
「オクスティエルナ伯爵あるいは放蕩の危険」:併録された戯曲作品。公演を重ねるうちにしだいに好評を得たらしい。この伯爵は極悪非道な人物で最後には殺されるのだが、そのシーン自体はなく語られるだけで、カタルシスをえられないままさっさと終わってしまう。
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