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漫画家まどの一哉ブログ

   
無頼派の思い出2
77年春、神経症で人格障害の孤独な毎日だったが、ある日ふと思い立ってひさしぶりに調布の鈴木翁二さんを訪ねてみた。あいにく留守のようでその時はそれで帰り、自分の四畳半アパートでだらだらとしていたその日の夜、とつぜん翁二さんから電話が入った。なんとせっかく描き上げた漫画原稿を飲んでるうちに紛失し、明日の朝までに8ページもう一度描きあげなければならないとのこと。自分は眠かったのでコーヒーを一杯飲んで目を覚ましてから、大崎駅で翁二さんと合流したら「遅かったね」と言われた。

一度新宿かどこかの駅で茶封筒の紛失物がとどけられてないか確認したがムダだった。
京王線で西調布へ。さっそく翁二さん家で作業開始となった。自分はベタやホワイトを手伝い、ところどころ畳の目などを描いたりすると「芸術的じゃないか」などといわれた。お寺の名前をいくつか書かねばならないが、寺の名前知らないか?などきかれた。午前中になると青林堂の渡辺和博氏から進行状況に付いて確認の電話が、おなじみのぶっきらぼうな口調で来る。

やがて原稿完成。疲れた体ながら翁二さんを自転車の後ろにのせて駅へ。電車を乗り継いで青林堂へ付き、近所の喫茶店で原稿受け渡しとなったが、翁二さんはこの期に及んでもこの部分をどうしたかったこうしたかったと仕上がりにこだわっている。実は自分がベタを塗り忘れた箇所があり、それは本を読む少年のズボンなのだが、その意味でトレペ上に追加の指示を入れてもらうと、掲載された誌面では少年のズボンは2色刷りのアカベタになってしまった。それが「むべ咲く哉」という短編である。

青林堂を出て、牧神社にいくという翁二さんと別れた。
(無頼派の思い出1は2010/7/14)

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