漫画家まどの一哉ブログ
アベシンの難読FAX
アベシンとは伝説の漫画家安部慎一であるが、新刊「世の終りのためのお伽噺」贈呈への礼状FAXが編集部へ届いた。これが相変わらずのくずし変体仮名の達筆でさらりとは読めない。時間をかけてなんとか読み解いたものが以下。
「手塚様 まどの様
先程はTELで失礼しました。
まどのさんの作品が後世に残る為には
まず、背景や人物に対する
愛情が必要だと思います。
しかし、そのまま進めば、一流の
漫画家には成れます。
モデルに対する美意識、
又、背景に対する感動、
それらが、芸術を成す
基本だと私は信じています。
次の単行本を今やロートルの
私の年に影響を受けず
頑張って下さい。
ありがとうございます。」
というわけで、アベシンの文章はしばしば理念的・観念的でたいして面白くないのだが、これは氏が宗教に凝る気質であることと同じ面の現れのような気がする。2010年の「月刊架空7月号:安部慎一特集」のインタビューでは、しごくまっとうなことを喋っているのに、文章を起こすとなると構えてしまうのかもしれない。
ところで先日のオージといいアベシンといい「ガロ」が生んだ天才漫画家で、作品は必ず後世に残ることは自分は若いころから信じてたが、この2013年においてどれだけ多くの読者に共有されているかというと、まったく情けない状況だ。つげ義春以降の表現といっても、結局コップの中のさざ波で終わっているんじゃないか。知り合いばかり集まってる文芸運動みたいだ。やれやれ。
と愚痴ってみましたが、それはさておき「月刊架空7月号」のインタビューは、ファンおよび研究者必読の内容なので今からでも買って下さいね。楽しいよ。
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