漫画家まどの一哉ブログ
「マクロプロスの処方箋」 カレル・チャペック
「マクロプロスの処方箋」
カレル・チャペック 作
(阿部賢一 訳・岩波文庫)
遺産相続争いの鍵を握るのは誰か。遺言書が書かれた時代から300年の時を経て当時を知る女が現れる。
戯曲を読むときになかなか辛いのは誰が誰やらわからなくなるところだが、この作品では問題の女性がいくつもの変名を持っており、それが生きてきた各時代ごとに違うのだから大変だ。
尤も彼女が不老不死の薬効を得て時代を越えて生き抜いてきたことは、話の途中でもだいたい想像つくから悩むことはない。各相続人の父親・曽祖父など同じファミリーネームの人物の話題も頻出して注意が必要だが、しっかり把握できなくとも困ることはない。もちろんしっかりわかっていれば、より楽しく読めるが…。
不老不死の秘薬の謎に迫る怪奇幻想といった内容ではなく、チャペックらしい風刺劇。長く生きることによって得た豊富な経験と知識を生かし、人間はようやく幸福を得られるのか。それとも迷いと苦しみの連鎖に終わるのか。不老不死から起きる当然の命題だが、正解はないとしても、なんとなく幸せとは遠い人生が待っていそうだ。
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