漫画家まどの一哉ブログ
「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ
「アルケミスト」
パウロ・コエーリョ 作
(KADOKAWA)
南スペインアンダルシアで暮らす羊飼いの少年。夢のお告げと不思議な老人の導きによってアフリカへ。ピラミッドに隠された宝物を探す旅で彼が見つけたものとは?
たしかに小説の形はとっているが、一般的な小説とは違った伝道書のような内容。まごうかたなきスピリチュアル小説だった。
それでも主人公の少年が丘の上のクリスタルショップで働き出し、いろいろと店をよくする工夫を考案するあたりまでは、ある種ビジネス指南書として読んでもいいかもしれない。ポジティヴ思考で運が開ける前兆を見逃さず、事業を広げるのだ。
個々の人間はどうしたってやがて死んでいく運命ならば、個人を超える大きな存在が自分をどう導こうとしているか、耳を傾けようとするのも現代人にとっては必要な視点かもしれない。そこに神とは言わないまでも超越した存在を見ようとするのがスピリチュアルなのか、一歩手前までは頷ける。
少年の旅は砂漠のオアシスに入り、錬金術士(アルケミスト)を探す。その前に一目見ただけで運命の恋人を発見するくだりなどは、やや単純な通俗性を感じた。錬金術士のかっこよさや、部族戦争で囚われたりする危機などはふつうに小説としての面白さがあった。
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