漫画家まどの一哉ブログ
「それから」 夏目漱石
読書
「それから」夏目漱石 作
(新潮文庫)
前期三部作2作目。高等遊民として結婚もせず日々を送る主人公。友人夫婦との再会を機にその妻への想いが再燃する。旧道徳を顧みず、自己の思いに正直に突き進む男の行方は?
途中まではいかにも親の援助に頼って働かない男の、緊張感のない社会観・人生観が披瀝され、のんきなものだなあという感想であるが、元友人であり現在人妻である女性への再燃する恋と決意と行動が切迫してくるにつれ、俄然目が離せなくなる。
5年前に自分の本心に無意識で蓋をし彼女を友人男性に譲ったのだが、5年経った今になって気付いたその想いを打ち明けるとは、彼女にとって何と残酷なことか。だったら何故あの時!?という設定がドラマを作る。しかしけっして恋愛ドラマではない。
クライマックスで彼女へ直接想いを打ち明けるシーンは見事なもので、緊張とほとばしる激情、彼女の懸命な抑制、突然溢れる涙。この二人の心の動きは実に迫真的な興奮をそそる。よく書けるものだと感心した。
後日、訪ねるわけにはいかなくなった彼女の家の周りを、矢も楯もたまらず日に何度も何度も彷徨する気持ちもよくわかる。情けないが冷静ではいられずこんな行動になってしまうと思う。
ラストの電車の車窓から赤い色を追いかけるシーンは、すでに心の平静を失っていて、狂気に寄り添うただならない心境だ。破滅かもしれないところを匂わせたまま話は終わってしまう…。
「それから」夏目漱石 作
(新潮文庫)
前期三部作2作目。高等遊民として結婚もせず日々を送る主人公。友人夫婦との再会を機にその妻への想いが再燃する。旧道徳を顧みず、自己の思いに正直に突き進む男の行方は?
途中まではいかにも親の援助に頼って働かない男の、緊張感のない社会観・人生観が披瀝され、のんきなものだなあという感想であるが、元友人であり現在人妻である女性への再燃する恋と決意と行動が切迫してくるにつれ、俄然目が離せなくなる。
5年前に自分の本心に無意識で蓋をし彼女を友人男性に譲ったのだが、5年経った今になって気付いたその想いを打ち明けるとは、彼女にとって何と残酷なことか。だったら何故あの時!?という設定がドラマを作る。しかしけっして恋愛ドラマではない。
クライマックスで彼女へ直接想いを打ち明けるシーンは見事なもので、緊張とほとばしる激情、彼女の懸命な抑制、突然溢れる涙。この二人の心の動きは実に迫真的な興奮をそそる。よく書けるものだと感心した。
後日、訪ねるわけにはいかなくなった彼女の家の周りを、矢も楯もたまらず日に何度も何度も彷徨する気持ちもよくわかる。情けないが冷静ではいられずこんな行動になってしまうと思う。
ラストの電車の車窓から赤い色を追いかけるシーンは、すでに心の平静を失っていて、狂気に寄り添うただならない心境だ。破滅かもしれないところを匂わせたまま話は終わってしまう…。
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