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「遠く、苦痛の谷を歩いている時」 高橋たか子
読書
「遠く、苦痛の谷を歩いている時」 高橋たか子 


表題作の他「甦りの家」「病身」
人間の意識の底に共有する意識だまりのようなものがあって、ときどきそこへ下りていっては、他人の意識をすくい上げてくる。それは夜見る夢の中で行われる場合が多い。といった共通のモチーフで描かれている三作。


「甦りの家」の中で元型という言い方で扱われるその共有概念を、作者は心理学用語とはなんの関係もないというが、ユングのそれを思い浮かべたとしてもそうはずれではあるまい。
主人公が少女時代に、哲学書を読まなくても同じことを知ることができるのではないかと考えるところから、この元型をめぐる彷徨が始まっている。自分と意識の底を共有していると見える年下の青年を思うままに操って、性的な妄想をも膨らましてゆく奇妙な日常。そんな非日常世界がまったく怜悧で平静な感触で綴られていく。
ユング心理学の知識は無くてもこのモチーフは面白い。自分にとって作品の良し悪しはテーマではなく感触なので、そういった意味では高橋たか子は好きな作家だ。過剰で逸脱した精神性を希求する作者の資質が好ましい。文章の肌触りがよくて読みやすかった。


「遠く、苦痛の谷を歩いている時」では一人称で語られる登場人物がいつのまにか入れ替わっていて、今喋っているわたしはさっきまでのわたしと違う人物だったりする。それも意識の奥底では繋がっていて、全体を見れば大きな共通の意識がそれぞれの形をとって立ち現れているのかもしれない。複雑な構成だが、流れるように読める。

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