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「猛スピードで母は」
読書
「猛スピードで母は」
長嶋有


子どもが出てくる話に初めから偏見がある。また小学生を中心に家族が描かれていると、これまた偏見を持つ。なにか現代家族や子ども達の問題にあらかじめ回答が用意されていて、さては予定調和ではないかしらんと勘ぐってしまう。
ところがほんとうはそんな正解はないということが、この小説および「サイドカーに犬」を読むと分かる。大人である母親にとって、必ずしも子どもは人生の中心ではない。各自自分の人生を生きるべきである。あらためてそう思わせるのは、作者の描く女性たちが強気でさっぱりしていてサクサクと行動するからだろうか。悩みや悲しみの感情を抱いたまま立ち止まっていない。この立ち止まらなさが日常の仕事や生活のリズムに支配されてのことなので、読む方もサクサクと立ち止まることなく昼間のリズムで読んでしまう感じだ。そんな気持ちよさがあった。
子どもと母親の関係、または愛人と子どもの関係に、一般的にこうだといったような設定はないので、描きすぎるとどこかで拾ってきたようなハナシになってしまうかもしれないが、そんな心配はいらなかった。2作品とも登場する男のほうはなんとも凡人で、やはり女の方が魅力的なのは主人公だからかな?
しかし作者の描く女性がいつもこうではあるまい。作品が違えばもめそめそした意気地のない女や、家事や仕事ができなくてグータラな女も出てくるのだろうか。それも人間だし読んでみたい気がする。

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